帯揚げ絞り体験(巻き上げ絞り)

先日開催された東京呉服専門店協同組合(通称 呉盟会)の春の赤札市にて、お楽しみ企画として帯揚げの絞り体験を行いました。

 

京都より京鹿の子絞り伝統工芸士の福濱弘恭氏をお呼びして、くけ台を使いながらの本格的な絞りを体験していただきました。

縮緬の地に”巻き上げ”という絞り方を行う体験を皆さま集中し黙々と作業していただき、

5~6か所に絞りをしていただけました。

 

絞りの歴史は古く、世界最古の染め物=絞り染めと言われております。

天平の三纈である纐纈(絞り染め)、夾纈(板締め)、蝋纈(ろうけつ染め)は日本でも古くからの染色技法として認識されております。

 

繊細な職人技を必要とする絞りですが、京友禅と同じく絞りの種類ごとに職人が異なるいわゆる分業制となっております。それぞれ絞りの種類によって専門の職人さんがおり、1枚のきものの中に複数の絞りが混ざって柄を表現する際には絞りの種類ごとに職人さんのところをぐるぐる回ってくくられることになります。

ひとえに絞りといっても絹糸で括る絞りや木綿糸で括る絞り、何回括るかでも表現できる様子が変わってきます。

 

今回は巻き上げ絞りという基本的な絞りの方法で帯揚げをくくりましたが、括る部分をつまんでいる布の先端部分に向かうにつれて糸が巻き付けるのが難しくなっていったり、括りの止めを行う方向を1回目と2回目で上下にそれぞれ止めることでしっかり止まりますが方向がわからなくなってしまったり、くけ台にひっかけている糸がたるんでしまわないようにぴんと張ったまま作業をするのに苦戦したりなど、絞りの奥深さに感嘆させられました。職人さんの技術力は目を見張るものがあります。

 

 

 

しかし絞りもほかの分野と同様、後継者がおらず技術の保全が難しいという問題があるとのことでした。

福濱先生が京都の絞り職人さんの中では若手となられるとのことでしたが(年金をもらう年代となっているのに一番の若手だよと笑ってお話しくださっておりましたが)、後に続く職人さんがいらっしゃらないのが現状です。

日本古来の素晴らしい技術が後世にきちんと伝わらず途絶えてしまう未来がすぐそこまで来ている危機感を覚えました。

微力ながらではありますが私たち呉服屋にできることは何か考え行動していきたいと思う次第でございます。

 

 

 

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